医療事故と補償
憲法で著名な財産権の地裁判例によれば,予防接種禍は国民全体の防疫利益のため不可避の確率で禍に遭遇するという特別の犠牲を払うのだから無過失補償(憲法29条3項類推)を行うべきだということになる(東京地判S59・5・1*1)。ただし,この考えは高裁で否定された(東京高判H4・12・18)。
「補償」を国家賠償で過失を条件に税金投入するか(後の大坂公判H6・3・16も同旨),損害賠償責任保険で無過失で保険による損害危険の分散を図るか。これは国家財政や過失責任主義という根本規範の変更を伴うから,簡単には制度改革は難しいが,その間も予防接種禍は待ってくれない。国(旧厚生省)は,児童に対する半ば強制接種義務から努力義務に変えたといっても*2,接種現場医師への問診負担と責任が重くなり,医師の疲労を招いているのは不合理ではないだろうか。*3