国民のための国家緊急権

 といっても生臭いミリタリネタではない。関係者が全部異動したと思うので,国家権力の濫用を恐れる私が敢えて書く。実は,パパリンの最後の仕事は覚悟の過労死だった。これは主治医チームの責任ではない。パパリンは主治医チームの厳命を無視して,夜間密かに登庁して,パンデミック緊急事態対処マニュアルを(とり)まとめたからだ。結果は,国民の幸せなことに無駄に終わって終息し,そのことをパパリンは天国で一番喜んだと思う。
 人一倍健康に留意したパパリン*1が,自己の命を削って公益に奉仕したのは,パパリンのプロテスタントの信仰心も大きいが,リスクマネジメント,医療現場の実情,ドクターヘリ制度,他省庁合議のバカげたプロトコル財務省を恫喝しても予算をとるノウハウ,厚労省の実働部隊の実情,関係法令*2の詳細を熟知した実務家は,霞が関の秀才官僚集団広しと言えども,パパリンしかいなかったからだ。
 私も深夜密かに車椅子を押して協力したが,そこで見たのは,平時の法律が(人権保障のために濫用禁圧のため)緊急事態の妨げになる実態だった。人命優先の人道主義の観点からは,平時の邪魔な法律を無視できる権限を,パンデミックや大規模地震や大津波対策のためだけには,国家緊急権として認めてもいいのではないかと思いました*3

*1:大好物のイクラもケーキもアイリッシュウイスキービーフジャーキーもレーズンバターも,いよいよ最期のラストライトを除き,決して口にしなかった

*2:医療関連法,航空関連法,自衛隊法,地方自治法警察法,米軍協力関連法,etc

*3:国家緊急権の大家である奥平先生ごめんなさい。なお,後述の脚注で真意を理解してください<(_ _)>

反融通無碍

 法は融通無碍ではない。それは,権力者の濫用を防ぐため,法のYESorNOの限界を明確に特定して国民が曖昧な処分に恐れることを防ぐためだ。平時はそれが一番である。しかし,緊急事態となると,笑えない笑い話が日本や諸外国に結構ある。

  • 国境なき医師団が,当該国の医師免許がないために医療活動を禁じられた
  • サバイブドッグ(検索犬・救助犬)が,予防注射の証明がないとCIQのQで持ち込み不許可となった
  • 火事場近くで「国有財産だから上司の許可がないから使えない」と水槽や池の汲み上げを拒否された
  • 国境なき医師団が,入国ビザがないと当該入国を断られた

もちろん

 阪神大震災の教訓から自然災害への緊急事態対処法令やマニュアルの整備は格段に進んだ。これは日本の官僚は誇ってよいと思う*1。しかし,災害発生直後のポストベイション対処法は整備できても,個々の伝染病疾患の発生隔離と個別防疫は元から法令があるので対処できても,パンデミックのような大規模プリベンションとインターベイションを想定した事態法はなく,そのノウハウも当然ながら蓄積されていなかった。
 さすがに現場で走り回る若手官僚は,危機感を募らせ,省庁地方国の縦割りにあえぎながらも,これを超えた事実上の省庁地方横断タスクフォースが情報交換を重ねるうちに形成され*2,最悪のシナリオ「数十万人パンデミック疫病死」における「死体野焼き」まで検討議論したらしい。この考えたくない「野焼き」ですら,ご存じの伝染病予防法令,墓地埋葬法令,廃棄物処理法令,etcの下部法令の改正が必要だったと言う。*3

*1:それ以前はどうだったかw知りたい人は自社連立政権をググってみて

*2:パパリンの特別病室に「見舞い」に来る初対面の若手官僚が入れ替わり立ち替わりだった。イケメンが結構いたのは意外だったが,若手美形官僚が来るとパパリンの口元が8時20分ベクトルとなったw

*3:ペプ奥様先生によれば,イスラエルでは,戦時敵国戦死体は,休戦まで防腐剤を振りかけて放置するらしい。灼熱の砂漠の太陽が最高の防疫だとか

法は原則と例外の集合体

 これは,パパリンがよく口にして,法律の議論となるとよく出てきた。
 法文(条文)の「但し書き」「〜を除き」「〜に反しない限り」なんかがその例だ。
 理念や原理原則で基本的立法趣旨から基本原則規範が定立されるが,必ず他の法益との調整や例外事案での対処が必要となってくる。憲法の人権規定でいえば,個人の尊厳に基づく基本的人権保障と公共の福祉がそれであり,民商法であれば,静的安全と動的安全であり,刑訴法であれば,実体的真実主義に基づく事案の解明と人権保障に基づく適正手続きの保障だ。
 同様に,平時の法を基本として,例外として緊急事態対処法を定める必要がある。50年以上前から,バトルステイションが常態の警察業務では,警察法警察官職務執行法には,緊急事態の対処規定が定められている*1。国家権力が濫用されるのを防ぎつつ,緊急事態対処法を研究整備する必要をパンデミック案件は教えくれた。が,ミリタリの有事法制という間違った暗いメージが暗雲をもたらしかねないので,緊急事態対処法*2の整備を口にするのは勇気がいる。

*1:警察法「第六章 緊急事態の特別措置」71条以下。警察官職務執行法4条(避難等の措置),5条(犯罪の予防及び制止)。海上保安庁法18条ほか

*2:その意味で厳密に言えば,国家緊急権というよりは,せいぜ非常事態権(非常措置権)か,非常事態対処法に過ぎないのだが

ウイルス?パニック映画

 B級娯楽作品もあるけど,国家緊急事態指揮機構(MCA)や感染阻止の不十分と過剰を考えるにはいいし,ヒーローやヒロインのイケメン男優も美形女優も見ごたえがあるでしょう。

カサンドラ・クロス*1
ホット・ゾーン
アウト・ブレイク
バイオハザード1〜同3*2
ドーン・オブ・ザ・デッド
バイオ・インフェルノ
アイ・アム・レジェンド
ディストラクション/合衆国滅亡*3
爆発感染/レベル5
デス・ウィルス/発光体
感染列島
……

 個人的な趣味では「カサンドラ・クロス」「バイオハザード1」「ディストラクション/合衆国滅亡」が好きなベストスリーです。ウイルスじゃなくて宇宙昆虫?の感染パニックまで入れると「パラサイト」*4がお勧め。