目標の前提たる模擬

 亡父は統計や確度の高い状況想定を駆使したシミュレーション*1が好きだった。本職役人のなせる技だったのであろう。ググると戦前のものが出てきた。

総力戦研究所
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%8F%E5%8A%9B%E6%88%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80
>模擬内閣閣僚となった研究生たちは7月から8月にかけて研究所側から出される想定情況と課題に応じて軍事・外交・経済の各局面での具体的な事項(兵器増産の見通しや食糧・燃料の自給度や運送経路、同盟国との連携など)について各種データを基に分析し、日米戦争の展開を研究予測した。その結果は、「開戦後、緒戦の勝利は見込まれるが、その後の推移は長期戦必至であり、その負担に青国(日本)の国力は耐えらない。戦争終末期にはソ連の参戦もあり、敗北は避けられない。ゆえに戦争は不可能」という「日本必敗」の結論を導き出した。驚くべきことに、これは現実の日米戦争における(真珠湾攻撃と原爆投下以外の)戦局推移とほぼ合致するものであった。

 そういえば,物心ついたとき,亡父が耳にタコができて悪性新生物になるくらい「模擬内閣の『シュミレーション』に従っていれば。戦前の(官僚)大先輩は優秀だった。」「何か戦略戦術を練る時,文官でも模擬演習は大事だ。」「統計と現状の冷静な分析が人生目標や国家百年の計で大事。」云々……と言ってたっけ。
 そういう緻密な計算と計画が大好物の亡父にも,「想定の範囲外」があって,カタストロフィーに見舞われたし,人生半ばにして半身不随で障害の生涯(それも毎日が死と向き合わせ)を遂げざるを得なかった。ハインリッヒの法則に従ってか,「単に運が悪かっただけ。『善人にも火の粉は降りかかる』とイギリスの偉い先生が言ってるくらいだし,『いわんや悪人パパにおいておや』(爆*2,なのだよ。」と達観するようになったけど。*3

*1:ただし,死ぬまで「シュミレーション」という誤用が直らなかった愛嬌

*2:意図的な誤用……というよりは本人は掛け言葉ギャグのつもりだったんだろう

*3:それまでの経過はいろいろあったらしいが,それについては牧師先生も口を噤んだ