病院事故調vs勤務医

東京女子医大が謝罪=「事故報告書は誤り」−無罪医師と和解・東京高裁
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201101/2011010600672
>原告側代理人によると、高裁が昨年12月、和解案を提示。和解条項には200万円の解決金支払いも盛り込まれた。
>大学の報告書は、佐藤医師が人工心肺装置のポンプの回転数を上げたままだったことが原因と結論付けていた。昨年8月の一審東京地裁判決は「佐藤医師の過失は否定されるべきだ」と指摘する一方、損害賠償請求権の時効(3年間)を理由に請求を棄却した。
>佐藤医師は業務上過失致死罪で逮捕、起訴され、09年に無罪が確定した。和解後には「報告書を基に起訴された。全国の医師には、医療事故の『内部報告書』の危険性を検討してもらいたい」とのコメントを出した。

 この事故や和解については,著名な医師の先生方もコメントされています。

 「事実認定は価値判断に先行する」にしないと。専門家医師の鑑定や事故調に素人警察検察が踊らされて*1無罪というのも*2。亡父が心を痛めて密かに救援運動を援助していた*3大野病院事件を想起します。

報告書 県立大野病院医療事故について
(PDF) http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/files/houkokusho.pdf

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第1 県立大野病院医療事故調査委員会
1 目的
 平成16年12月17日に帝王切開術を受けた妊婦が、同日19時1分に手術室にて死亡するといった医療事故が発生した。この事例を検証し、今後の前置胎盤・癒着胎盤症例の帝王切開手術における事故防止対策を検討することを目的として設置した。
2 構成員
 委員長:○○○○(○○○○病院診療部長)
 委員:○○○○(財団法人○○○○病院附属○○○○○病院産婦人科部長)
 委員:○○○○(○○○○○○○○○○○病院○○○○○○○医療センター講師

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3 総合判断
 今回の事例は、前1回帝王切開、後壁付着の前置胎盤であった妊婦が帝王切開手術を受け出血多量、出血性ショック、循環血液量減少その結果心筋の虚血性変化をおこし死亡に至ったと思われる。
 出血は子宮摘出に進むべきところを、癒着胎盤を剥離し止血に進んだためである。胎盤剥離操作は十分な血液の到着を待ってから行うべきであった。
 循環血液量の減少は輸液(輸血も含め)の少なさがある。他科の医師の応援を要請し輸液ルートを確保して輸液量を増やす必要があった。
 手術途中で、待機している家族に対し説明をすべきであり、家族に対する配慮が欠けていたと言わざるを得ない。

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 この事故調査報告書が,民事損害賠償保険を適用させるために作成されたのだとしたら,もし当事者(県職員,調査委員会委員(長)医師)にその認識認容があれば,保険金詐欺(第三者詐欺)*4の幇助に問われた危険性すらあります。実際には本犯(主犯)に当たる県知事が保険金請求に着手していなかったから,未遂にもならないから不可罰だったんでしょう。それが遺族の経済的救済や慰謝の措置という善意に出たものだとしても(情状では考慮されるでしょう)。*5

*1:それだけ医師や医療スタッフの医的裁量が尊重されて信用されている証左です

*2:被告人となった医師と弁護士が,協力医療関係者の証言で,「内部調査」「医療事故調査員会の調査」を覆したからでしょう。いわば病院事故調と孤立勤務医の闘いみたいなもの

*3:公務員なので生前には公にできなかったようです

*4:詐欺の犯人Aが,保険会社Vから自分が保険金を得ないで,第三者Bに保険金を取得させる態様です。詐取した金品や財産上の利益を「自己又は第三者」が取得すれば詐欺罪が成立するからです。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html#1000000000000000000000000000000000000000000000024600000000000000000000000000000

*5:この点では私は人のことは言えません。絶対安静外出厳禁という医師団の指示を無視して,某パンデミック緊急対策のため深夜密かに車椅子で登庁するパパリンを止めるどころかその車椅子を押して幇助したのですから。もし深夜登庁がパパリンの死期を早めたと立証されたら私は自殺関与罪……