人命関連業務は業過致死傷罪

みんなにわかる!最高裁判所判例解説2010年06月27日
H22.05.31:業務上過失致死傷被告事件@明石市花火大会歩道橋事故
http://mirror-of-water.seesaa.net/archives/201006-1.html
>平成19(あ)1634 業務上過失致死傷被告事件 平成22年05月31日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 大阪高等裁判所
>花火大会が実施された公園と最寄り駅とを結ぶ歩道橋で多数の参集者が折り重なって転倒して死傷者が発生した事故について,雑踏警備に関し現場において警察官を指揮する立場にあった警察署地域官及び現場において警備員を統括する立場にあった警備会社支社長に業務上過失致死傷罪が成立するとされた事例
>○高裁・最高裁の判断
>1:まず,予見可能性があったか
>2:続けて,予見義務・回避義務があったか
>3:さらに,回避可能性はあったか
(判決全文PDF)http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100603105331.pdf

 判例時報の最新号に掲載されていました。鉄道も同じで人命を預かる「許された危険」での高速移動イナーシャルが人体の至近を通過するのですから。ホームドアを早くしてね。いわんや「スピードを出し過ぎたら脱線する」と指導運転士が見習い運転士に指導するような急カーブなら……。

福知山線事故:JR西社員がカーブの危険性証言 神戸地裁 2011年1月20日 12時48分 更新:1月20日 21時45分
http://mainichi.jp/select/today/news/20110120k0000e040055000c.html
福知山線などを管轄する京橋電車区で運転士の指導訓練を担当していた社員(50)は、事故現場のカーブの危険性について「ブレーキをかけ遅れると最悪の場合、本件事故のようになるかもしれないと事故前に思ったことはある」と証言した。
>現場カーブは96年、半径600メートルから304メートルに付け替えられ、制限速度は時速95キロから70キロに変わった。カーブ手前直線の制限速度は120キロのため、速度差は最大50キロに拡大した。
>検察側の尋問で、社員は「見習運転士には、ブレーキポイントを見失ってカーブに入れば、(現場の)マンションに激突するので、絶対にポイントを忘れないでほしいと指導していた」と述べた。脱線した電車の運転士(当時23歳)の指導も担当しており、事故後、当時社長だった垣内剛氏に「考え事をしてブレーキを忘れ、遠心力で脱線でもしたら怖いと思っていた。見習運転士にも実際にそう教えていた」と伝えたことも明らかにした。
>一方、弁護側の尋問では、「03年ごろまでダイヤはゆとりがあり、乱れることはなかった。それ以降に快速の停車駅が増えるなどして、事故当時はすごくきつくなっていた」と述べ、JR東西線が開業し、山崎被告が鉄道本部長だった97年当時のカーブの危険性認識は否定した。
福知山線の運転経験がある別の社員(48)は検察側の尋問で、現場カーブについて「脱線転覆する可能性はある」と証言する一方、弁護側の尋問では「ブレーキポイントを守っていれば問題ない。事故前に現場カーブが特に危ないと思ったことはない」と述べた。

 「ブレーキポイントを守っていれば問題ない。事故前に現場カーブが特に危ないと思ったことはない」というのは,「ブレーキポイントを守っていれば」という前提仮定の上ですね。この前提仮定が崩れたら「考え事をしてブレーキを忘れ、遠心力で脱線でもしたら怖いと思っていた。見習運転士にも実際にそう教えていた」となるわけで,証言はマスコミがはやし立てるような矛盾はなく,キチンと検討すれば論理的整合性があります。証言の結論部分にすぐ飛びつくマスコミの悪いくせかもしれません。
 当事者が危険の認識がないと証言しても,それは「認識なき過失」となるわけで過失を否定する証拠そのものにはなりません。
 速度照査型ATSがあれば防げた列車暴走(追突or終端脱線)事故。

1988年(昭和63年) 東中野駅列車追突事故
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%B8%AD%E9%87%8E%E9%A7%85%E5%88%97%E8%BB%8A%E8%BF%BD%E7%AA%81%E4%BA%8B%E6%95%85
>……追突。後続電車の運転士1名と乗客1名の計2名が死亡、116名が重軽傷を負った。国鉄分割民営化後、初めて乗客に死者を出した事故である。
>当該区間の保安装置はATS-B形で、警報が停止信号の約600m手前から作動し、さらに東中野駅手前約137mに設置されていた場内信号直下警報コイルでも警報を発するが、確認扱いと呼ぶ操作さえすればそのまま進行が可能であった。
>過去にも同じ地点で追突事故が1964年・1980年と2度もあるが、どちらの場合も停止信号警報の確認扱いをした後に一旦停止しないまま進行する「追い上げ運転」を行ったことが原因である。
>この事故も含み3度とも追突した電車の行先は「中野行」で、終着駅での折り返し時間が非常に短いために運転士は新宿〜東中野間で走行中に持ち物をまとめるのが常態化していたといい、前方列車が見えない線路配置が重なって事故を誘発した可能性も事故直後の報道で指摘された。
>この事故を契機にATS-B形を使っていた全区間(首都圏と大阪圏)を含む稠密ダイヤ線区では、停止予定位置を基準にそれぞれの列車の減速性能から各地点の限界速度を定める速度パターン照査により確認扱いをなくして確実に強制停止させられるATS-P*1への切替を進め、さらにJR東日本では東海旅客鉄道JR東海)と共同で全JR向け即時停止ATS-SN形*2を開発した。

2005年(平成17年) 土佐くろしお鉄道宿毛駅衝突事故
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E4%BD%90%E3%81%8F%E3%82%8D%E3%81%97%E3%81%8A%E9%89%84%E9%81%93%E5%AE%BF%E6%AF%9B%E9%A7%85%E8%A1%9D%E7%AA%81%E4%BA%8B%E6%95%85
>ATS*3やEB装置*4の作動があったものの、95Km/hの速度で先頭車両は駅舎のエレベーターを破壊して外壁を突き破り、さらに2両目に押し潰されたことによって原形をとどめず大破した。この事故により運転士が死亡、車掌と乗客9名が重軽傷を負った。
>その設置位置がロング地上子は最高速度対応ではなく、運転士による減速で約51km/h以下に減速される前提の位置に設置されており、また2対の過速度防止速照地上子対は全く根拠のない位置に設置されており、地上子配置及び配置規則が適正なものでなかったため……。

 「ブレーキポイントを守っていれば問題ない」というなら上記2つの暴走事故は昭和63年から平成17年まで発生しなかったわけで,道路交通法を守っていれば交通事故は無問題,運航規定と管制官の指示を守っていれば航空機事故は無問題というのに等しく,何ら昔からの事故発生の事実にも至近の鉄道航空事故の教訓を見出してない自白(不利益事実の陳述)ですよね。
 もしこれが無問題なら,デッドマン装置(ED)も自動列車制御装置(ATS)も不要で,そんな無用な長物を国土交通省(旧運輸省)が設置を勧告ないし命令したら国家賠償ものでしょう。これでおわかりですか。>JR-Wさま。