過失4要件(既出)

1 予見可能性
2 予見義務
3 回避可能性
4 回避義務

 国鉄時代から繰り返された追突事故や脱線事故を見れば,輻輳路線(山手線),減速必須路線(終端・急カーブ)なら,うっかりヒューマンエラーや急病で運転規則や速度制限は守られない,だからマシンシステムのバックアップがATSやEDを産んだわけで,予見可能性も回避可能性も客観的に存在します。旧運輸省時代からそのような危険路線にATS設置を繰り返し勧告されてきた鉄道の歴史から,予見義務も回避義務も認められます。もしこれがないとしたら,客観的な予見回避が可能なのに,旅客の命を犠牲にしても運行せよというに等しく不合理でしょう。医療と違って人命の危険を感じたら運行停止にするだけで人命を救える緩い業務なのですから(人命保護という観点で緩いという意味だけです)。
 定時運行や乗客やマスコミの運行圧力(遅延叩き)は緩くないというのは判りますが(これは航空機も同じ),それを理由に人命を犠牲にすることは誰も認めないと思います(あのマスコミすら)。それを会社の方針で黙認したら,理論上は未必の故意しかも概括的故意による殺人罪になってしまいますし。鉄道運行に人命救助が業務上の主たる目的ではありませんし,事故発生の緊急異常事態だけで通常業務ですらありません。医療なら本質そのものが人命救助(生命保全>身体保全>健康保全)ですし,通常業務で常に緊急性と背中合わせですし,ER(救急外来)なら常時緊急事態で,常に義務の衝突で,予見義務や回避義務の違法性が相当低減ないし阻却されますけどね。