統計操作の日米比較

米軍関係者 起訴16% 国内事件42%より低く 2011年8月13日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-180481-storytopic-111.html
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>2010年の県内で発生した米軍関係者(軍人・軍属・家族)の刑法犯(自動車による過失致死傷除く)の起訴率が16・2%だったことが日本平和委員会の調べで明らかになった。全国の米軍関係者の同起訴率は11・7%。日本の事件全体の起訴率42・2%に比べ、依然として米軍関係者の犯罪が特別扱いされている現状が浮き彫りとなった。
>同委員会は情報開示請求で法務省が公開した「合衆国軍隊構成員等犯罪事件人員調」を基にまとめた。同委員会は「重要事件以外は日本が第一次裁判権を放棄するという密約を検察当局が引き続き忠実に実行している実態を示すもの」と指摘している。
>起訴・不起訴ともに内訳で多いのは道交法違反と自動車による過失致死傷。県内では自動車による過失致死傷で57人、道交法違反で64人が「公務中」を理由に不起訴処分となっている。

 米軍人の公務中犯罪は,日米地位協定により,米軍から公務証明書(第一次裁判権通告)が提出されれば,日本は公訴権を喪失し訴訟条件の欠缺(被疑者死亡と同様)で不起訴となります。これは日米「密約」ではなく日米地位協定という条約に明文で定められており*1 *2,「密約を検察当局が引き続き忠実に実行している実態を示すもの」ではありません。
 そして,日本人同様,米軍の犯罪は,自動車運転過失致死傷や道路交通法違反が圧倒的です*3。特に米軍人の昼間9to5は公務で国内移動が多いため「公務中」なのは自然でしょうし,日本人でも自動車運転過失致傷死や道路交通法違反は,3週間以内の軽傷や軽微事案が圧倒的なため起訴猶予が一番多いはずです(交通犯罪の全起訴率は平成22年度で36.5%でうち自動車運転過失致傷死罪の起訴率は9.7%)。
 こういう法令や統計実体を正確にトレースしたら,上記のような記事になるのでしょうか? これでは統計数値の意図的な操作による印象操作と勘繰られても不思議ではありません。「統計でウソをつく方法」とは言わないまでも。*4

*1:日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(日米地位協定)」。日米地位協定日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)は、在日米軍による施設・区域の使用を認めた日米安全保障条約第6条を受けて、施設・区域の使用の在り方や我が国における米軍の地位について定めた国会承認条約。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/index.html

*2:日米地位協定第17条第3項 裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。(a) 合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を有する。(i) もつぱら合衆国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもつぱら合衆国軍隊の他の構成員若しくは軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族の身体若しくは財産のみに対する罪(ii) 公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/pdfs/17.pdf 

*3:上記図表と平成22年度版犯罪白書 http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/57/nfm/mokuji.html を比較すれば一目瞭然です

*4:実際,プライマリ時代の上級生が在日米軍マリーンとして勤務中に軽傷交通事故(全治2週間)を起こし,「公務中犯罪証明書で日本のジェイルに入るのは免れたけど,軍法会議の判決でドライバーズライセンス没収2か月(運転手軍務停止2か月という停職兼賃金カット・車社会の沖縄だと事実上外出禁止2か月に等しいラスイ)の処分を受けた。軍歴に初めてキズがついた。」「日本人なら全治2週間だと刑事不処罰でカイシャから停職や賃金カットもないからエンビー。ワイフから賃金カットでサンノバビッチングと怒られた。」と嘆いていました。