責任考

 犯罪とは,(1)構成要件に該当する,(2)違法,(3)有責な,行為である。
 (1)構成要件に該当するとは,刑事法が犯罪と規定する要件に,形式的かつ実質的に当てはまる行為をいい,(2)違法とは,社会的倫理規範に反する法益侵害の危険な行為をいう。
 ここまでは,客観的一般的判断が可能で,行為者の個人的な事情や性格を取捨することが可能な判断で,専ら行為の外形的事実から認定や推認が可能である。
 それが,故意やわいせつ目的などの主観的構成要件要素でも,はてまた,正当防衛意思や社会的相当行為の認識などの主観的違法要素でも,行為の外形的事実すなわち外部から認識できる身体の動静や四囲の客観的状況から,推認が十分可能である(はずだ)。
 AがVの身体の胸部や腹部を刃渡り30センチの出刃包丁で24回めった刺しにした(それも腹部や胸部の一部は刃先が背中まで突き通っていた)事実からは,Aが黙秘・否認していても,「殺意」という故意*1が,十分推認(証拠から推測推論で認定)される。*2

*1:構成要件に該当する行為と結果に対する認識及び認容

*2:この場合は,Aを取調べでカチ割って自白を得る必要がない