自殺と逮捕

 被疑者の自殺を防ぐために逮捕・勾留は許されるか,というお題です。↓インスパイア元。

石川議員逮捕「緊急性あった」=記者会見で東京地検
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010011600024
>自殺の可能性があったのかとの質問に対しては「否定はしない」とした上で、「相手のあることなので具体的な説明は控えたい」と話した。

 クリスチャンやプロテスタントなら,自殺は罪ですから肯定される方が多いと思います。
 ここでは宗教のマターではなくてリーガルマターとして記述したいと思います。
 アンチョコメモによれば

 終戦直後の「法曹会決議」*1では「自殺は罪証隠滅*2に該当する。」とした。
 しかし,現在の実務例では,「自分の罪証を隠滅するための自殺は,自己の証拠隠滅が犯罪とされていないこと*3との均衡から,勾留要件の罪証隠滅に該当せず,自殺が共犯者など他人の犯罪の罪証隠滅になる場合なら,これに該当する。」という見解が多数である。

とのことです。
 自殺は,証拠資料でもある被疑者自身の存在を抹殺することで,取調べと自分が供述する供述証拠を隠滅する行為ですから,現在の実務の多数説が正しいと思います。

*1:法曹三者と学者の会議で,新憲法制定まがない時期では最高裁判例よる法律解釈の統一が出るまで待てないので,暫定的に法令解釈を決議して勧告した組織

*2:刑訴法60条1項2号「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」

*3:(証拠隠滅等)第104条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。