法令用語トリビア

 法令用語には,漢字や送り仮名が旧式なものがあります。漢字は旧漢字なものもありますが,「置換漢字」が古いものまであります。法律の成立時期によっては,法令内に矛盾もあります。*1 *2

「権利の濫用」(民法1条3項):現行法文(ひらがな化前の民法旧記載(明治29年制定)を踏襲)
「薬物の乱用」(各種行政文書):当用漢字の「同音の漢字による書換え」(昭和31年7月5日国語審議会報告,内閣告示・訓令)

「取調べ」:刑事訴訟法の法文表記による名詞
「取り調べ」:名詞及び動詞の本則(昭和48年(昭和56年一部改正)国語審議会報告「送り仮名の付け方」内閣告示・訓令)
「取調」:名詞の「複合語・通則7」で送り仮名を省略できる場合(上記告示・訓令)

 ネットで詳細に説明されているサイトもあります。

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第4部補足 用字用語の考え方と用例
適切な用字用語を統一して使う
http://www.yamanouchi-yri.com/yrihp/techwrt-2-4s/t-2-4s01f.htm

 民法の教授は「権利の濫用を法文どおり正確に書かないと学年末試験では1字1点減点する。」と宣言されてますた。_| ̄|〇 刑訴法のゼミでは「別にどっちでもいいよ。内閣告示訓令に準拠しようと法文に従おうと。」「前には法文でバラバラに『禁固』『禁錮』『禁こ』だったけど,学者の論文でも法律ごとに書き分けている人はいないから。」との主任准教授のありがたいお言葉。m(_ _)m
 医学用語でも同様の問題が一応あるらしいです。メイビー

「頸椎捻挫」と「頚椎捻挫」と「頚ついねん挫」と「頸つい捻ざ」

 これは,亡父が大変お世話になった某病院でレセプトチェックのボランティアしたときに「用語が統一されてないなー」と思った典型例でした。そこの病院は規模が大きく,引退間際の院長先生から医学部出たばかりの研修医の先生まで,「世代がバラエティに富んでいるからかな」と思いました。「戦前はドイツ語でカルテ書いていたし,(漢字で)略字を使うと書き直されたものですよ。」と白髪の大先生がニコニコしながら話されてましたので。

*1:これを得々と語れば,法学部一年坊主らしいかわいらしさで,黙って正確に記述できれば合格者レベルだそうです

*2:「取調べ」は送り仮名が間違っている,という突っ込みメイルが来たので付記です