何罪が成立するか論ぜよ(刑法各論)

「シュレッダーにかけてしまえ」阿久根市長が上申書破棄命令
http://www.47news.jp/news/2010/06/post_20100628150918.html
>……上申書は、竹原市長が議会を開かず、条例や予算を専決処分で独断で決めていることを「法手続きに照らすと疑問」と批判。法令順守や議会の招集、議決を求めていた。
>関係者によると、竹原市長はこれに怒り、上申書を受け取ることも見ることも拒否。総務課長に「シュレッダーにかけてしまえ」と破棄を命じたという。

 お役人の元娘は,門前の小僧習わぬ経を咏むのたとえで,お役人の文書管理には厳重な規定があることを知っています*1。上記上申書は,報道のとおりとすれば,公務員が最終上司である首長に首長の処分の法適合性を職務上求めて職務上作成した公文書でしょう。そうでなくて私文書と解しても,上記上申書の趣旨から首長の行政処分(争訟)に関して首長あてに提出した文書ですから,「公の用に用いるために公共団体の長という公務所(首長も役所です)へ提出して提供した文書」ですから「公用文書」に該当することは争いがないと思います。
 受理すれば,文書の性質に従った保存年限(1カ月から永久)まで厳格な保管が法令や条例に基づいて決まるので,これに反して首長が破棄を命じれば,法令違反や条例違反の問題が生じます。不受理なら,その文書の所有権を役所や首長という地方自治機関(首長も地方自治機関です)が取得しないので,発信者に「返れい」しなければいけません。
 そうすると,上申書が,公文書たると私文書たると,受理をしようとしまいと,これを首長が専断的に破棄を命じれば,「公用文書等毀棄罪」が成立する疑いがあります。

刑法 第四十章 毀棄及び隠匿の罪
(公用文書等毀棄)
第二百五十八条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

 なお,公用文書等毀棄罪は親告罪ではありません(第二百六十四条参照)。一刻も早く法に適合した正常化が当該市に訪れることを願ってやみません。

*1:パパリンが役所の文書をパーカー万年筆で起案していたとき(そういうワープロが珍しい時代),そうと知らない幼児の私はそれで紙飛行機作って飛ばしてしまいました_| ̄|○ パパリン日記を最近読んだら,在米二等書記官にこっぴどく叱られたとは知らなかったorz