エラーは統計上不可避

 ヒューマンエラー(人間の知覚認識記憶判断決断動作の過程の過誤)は,統計上は,極僅少でも不可避である。化学的な統計が比較的整備された鉄道事故や航空機事故を見れば,警報計器読み取り聞き取りエラー(リードエラー)から,ボタンの押し間違いまで一定の確率で発生する。それは人間の注意力が常に緊張を強いられない脳構造になっているからだという説も聞いたことがある。タルミや狎れだと頭ごなしに批判したい方は止めないが,それは科学的態度ではない。

調剤量誤り、男性死亡させた疑い 薬剤師2人を書類送検 2010年8月18日11時56分
http://www.asahi.com/national/update/0818/TKY201008180167.html
>処方箋は1回1.5ミリグラムの血栓症防止薬を出す内容だったが、女性薬剤師(37)が過って6ミリグラムを調剤。薬局長の男性薬剤師(59)は量の確認を怠った疑いがある。女性薬剤師は「誤調剤により事故を起こしてしまい、深く反省している」、男性薬剤師は「慣れがあり、担当任せにした。申し訳ない」と話しているという。

 文書の数字の読み取りミスなら,老眼鏡がまだの世代でも。3と8と6と9はリードエラーが世界中に多発した経験則で,簿記の手書き文字では,意図的なキャラで誤読を防止するようにしているのは,皆さんご存じのはず。
 かくいう私も,大学入試の模試で,あせって説いた数学の最終問題では,解法は完璧だったのに,8を6と誤読して不正解となった17歳の苦い体験がある。したがって,私は他人のリードエラーを笑えないし責めることもできない。
 処方箋のような命にかかわる文書の数字は,簿記数字キャラに限定するとか,いっそのことバーコードでパソコンが音声読み上げするとか,調剤担当者とチェックマン(薬剤師長)が音読読み上げで目と耳のダブルチェックを励行してはどうだろうか。鉄道では,「指差喚呼*1といって,誤読事故防止に効果がある安全確認手段として普及している。
 信号や標識や進路上を人示指で差しながら「信号よし,制限速度40,(進路)前方よし,ヤマト発進」というように(。_・☆\ ベキバキ
 それでも列車の赤信号冒進追突や飛行機の高度不足の墜落を防ぐことができないため,人間の注意力のバックアップ手段で,自動列車停止装置(ATS)*2や対地接近警報装置(GPWS)*3が開発導入された歴史がある。
 そこで,病名と投薬量のデータベースが,自動的に処方誤りをチェックするシステムが一部導入されている。しかし,傷病や投薬の個体差を完全にカバーできないので,まだ,致死量を超えたとか,ヒトケタ違うとかの判断どまりらしい。