裁判員裁判の負の側面(鑑定医)

裁判員裁判、異例の審理再開 遺体鑑定医師に2度目尋問 東京地裁 産経新聞 7月15日(金)17時27分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110715-00000587-san-soci
>公判は、12日に検察側が懲役8年を求刑し、いったん結審していた。この日は判決が言い渡される予定だったが、芦沢裁判長が職権で再尋問を実施した。裁判員裁判で、結審した後に審理が再開されるのは異例。
>再尋問で芦沢裁判長に表現の変遷を尋ねられた医師は、「所見に矛盾はない。裁判員に分かりやすく、と再三指導されていたので報告書では細部に触れなかった」と説明。「裁判員裁判になって仕事が増えた」「もう一度説明するんですか? いい加減にしてください」といらだちを見せる場面もあった。

 裁判員裁判は,公判前整理手続きが義務化され(裁判員裁判*149条),法律で追加主張立証が制限されますから(刑訴法316条の32第1項),裁判所が結審(終結)後に職権で弁論再開して2度目の証人尋問したということは,初回の証人尋問は裁判官が聴くべきことを聴き忘れた「審理不尽の違法」*2があったことを認めたようなもの。
 まぁ,法律も医学も裁判も素人である一般人の裁判員が6名もいたから「終結後の評議で素人裁判員から素朴な疑問が出て証拠上不分明だった」のでしょうけど,検察官も弁護人も納得して論告弁論したんだし,職業裁判官3名も納得して終結宣言*3したのだから………。そして法医学鑑定証人の医師の先生も,素人に分かりやすく鑑定書に記載したり証言したりして多大な苦労をしたのに,「それを証言の変遷ととられては納得いかない。もう一度同じことを証言するのか。」と気色ばむのも自然な気がします。

*1: 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年五月二十八日法律第六十三号)

*2:訴訟手続きの解釈運用を誤った「訴訟手続きの法令違反」(刑訴法379条)の一類型とされています

*3:「弁論を終結します」とか「次回は判決でよろしいですね」とか