告発の行方

 といっても著名な法廷サスペンス映画*1のお題ではない。

福島原発事故】 東電最高幹部、山下教授ら張本人32名を刑事告発 〜上〜
http://fpaj.jp/news/archives/4747
>……東京電力勝俣恒久会長はじめ最高幹部3人、原子力安全委員会斑目春樹委員長、寺坂信昭・原子力安全保安院長ら(以上Aグループ)、福島県放射線健康リスクアドバイザーの山下俊一・長崎大学大学院教授(※)、高木義明文部科学大臣ら(以上Bグループ)。
>告発状によると主役たちの罪状は次のようなものだ――
>●東電(勝俣会長ら)は、いったん原発事故が起きれば多数の一般住民を被曝の危険に晒すことを知りながら、そうした事態を避けるための措置を怠った。さらには「原発安全神話」をふり撒き、危険性を指摘する学者、ジャーナリスト、市民に攻撃を仕掛けた。
>●原子力安全保安院(寺坂院長)は、同院所管のワーキンググループ委員から原発を襲う津波の危険性を指摘されていながら、その対策を東電に講じさせなかった。
>●原子力安全委員会斑目委員長ら)は、事故防止のために万全な措置を講じるよう東電や安全保安院に指示しなければならないにも関わらず、この任務を放棄した。
>「浜岡原発運転差し止め裁判」の際、斑目委員長は「再循環系が複数同時に破断し、同時に緊急炉心冷却系が破断することも考えるべきではないか?」と問われ、「地震が起こった時に破断することまで考える必要はない」と答えている。(裁判で問われていたことが福島第一原発で実際に起きてしまった。これが任務放棄として告発されているのである)
>●福島県放射線健康リスクアドバイザーの山下教授は、放射線専門家として子供らの安全を図る義務があり、速やかに子供らを避難させなければならないにもかかわらず、ずっと放置していた。一般市民、児童、生徒、学生らの避難と放射性物質による被曝からの防御対策をサボタージュした。
>(※注):山下俊一氏は7月15日付けで福島県立医科大学副学長に就任。

告 発 状
東京地方検察庁 特捜部直告班
ご担当者 殿
平成23年7月8日
http://www.rupoken.jp/indictment/Indictment(scholar).pdf

twitter@motoken_twモトケン
http://twitter.com/#!/rt_luckdragon/status/93595325205450752
>この告発状 http://ow.ly/5ILBm 「被害の事実」として被爆の事実を指摘しているが、被爆自体は傷害とは言い難い。被爆は傷害つまり健康被害の原因にはなり得るが健康被害そのものではない。よって傷害の事実の記載がなく、業務上過失致傷罪の告発状としては要件を充たしていない。

 告訴告発事実の一部要件欠落は,告訴人告発人の意思を善解したり補充させたりして,最終的に受理されることが多いそうです。*2
 しかし,例外的に告訴の要件を満たさないとして「不受理」が認められているものがあります(通説・実務例)。
(1) 告訴能力欠如 意思能力を欠く幼児や心神喪失者の告訴がその例
(2) 告訴意思の欠如 告訴が債権者や親戚等に脅迫・強要されたもので告訴人に告訴意思を欠く場合
(3) 告訴事実が明白に虚構 客観的常識的に見て告訴事実が完全に虚構である場合

  • 豊臣秀吉織田信長は,共謀の上,平成23年6月1日,日本国内のいずこかで,私に「ウグイスを見つけ次第殺せ」と指令を出して,私にウグイスを殺させ,もって器物毀棄(動物傷害)罪と種の保存法違反を教唆した。
  • ゴルバチョフオバマは,共謀の上,2020年ころ,宇宙空間の旅行中に,インターネットを介して,私の頭に電波を到達させ,私の頭の中に「自衛隊員を殺して日本から核兵器を抹殺せよ」と強要した(強要罪)。

(4) 告訴事実自体が犯罪不成立
 これが今回の告発じゃないかと愚考します。被ばくは暴行(不法な有形力の行使)となっても,被ばく自体は傷害や致傷(人の生理機能の障害)には該当せず,被ばくによって内臓疾患とか皮膚炎とか放射性障害という放射能に起因して人の生理機能の障害が発生して,初めて傷害や致傷の構成要件の結果要素(要件)に該当するからです。そして,放射性障害(傷害)等の報道には今のところ聞知してませんから善解しても業務上過失傷害は不成立でしょう(構成要件要素の欠缺)。*3
 そして,暴行罪*4故意犯に限られており,「(業務上)過失暴行」は現行法上で不可罰だからです。