不可視「波」は暴行の手段か?

 笑ってはいけません。初学者はこういう基本的なことからシコシコ学ぶんです。刑法の暴行罪(208条)に規定する「暴行」とは,「狭義の暴行」であって,「不法な有形力を他人の身体に向けて加えること」をいい,「他人の身体に向けられて脅かす到達可能なものであれば足り,必ずしも他人の身体に不法な有形力が接触到達することを要しない」ものです。それゆえに,タバコを吹きかけたり,石を投げたり,包丁や日本刀を振り回して,それが外れても,相手に到達する可能性があれば暴行罪が成立します(通説・判例*1 )。
 この理から,不可視の音波でも暴行罪の「暴行」に該当します(通説・判例 S29.8.20最判刑集8-8-1277)。騒音オバサン事件で有名なように,すでに音波が人の聴覚や精神に疾患を与えることは今なら常識ですけど,終戦直後の混乱期では最高裁まで争ったんですねー(苦笑。
 また,強力な可視光線で人の視力を奪えますし,紫外線や赤外線(視外線)でも,X線でも,アルファ線でも,ガンマ線でも,ベータ線*2でも,いずれも人の皮膚や視聴覚機能や内臓や脳神経等の生理機能に障害を負わせられますから,暴行の手段として不法な有形力足り得る「波」でしょう。*3
 さらに,粒子の性質をほとんど持たない電磁波(電場と磁場を相互にウェイブライダーする波)でも,マイクロウエーブオーブンでわかるとおり,人を充分殺傷できるので*4,純然たる波の電磁波も暴行に該当すると思います。ガンマ線放射能線の中で著名な電磁波ですよね。

*1:S25.6.10東京高判・高集3-2-222,S39.1.28最判刑集18-1-31

*2:兵器としてプロトン銃が試作されていますし

*3:もっとも「波」であるより高速飛行「粒子」という性質の方が強いもの…アルファ線ベータ線…がありますが,そして,アインシュタインの理論によれば,光も波であるとともに粒子の性質を有するようですが(;´Д`A ```

*4:米国では雨に濡れた飼猫を乾かそうとして電子レンジに入れた過失により愛猫を昇天させたユーザがメーカーを訴えた製造物責任訴訟がありました