本能寺は「失言」

鉢呂経産相辞任に地元落胆
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/news/20110911-OYT8T00038.htm
>鉢呂氏は北海道大を卒業後、1971年から18年間、今金町農協に勤務した経験があり、道内の農業関係者からの期待は特に大きかった。同農協の細川信一組合長(71)によると、鉢呂氏は農協時代、堅実な営農指導を行い、地域の生産者の信頼を集めていた。
>細川組合長は「若い頃の地道な姿を知っているだけに今回の失言は残念。閣僚としての言葉の重みが、理解できていなかったのだろうか。大いに反省し出直してほしい」と訴えた。

 指導的立場の人(政府*1 )は,公私の面で組織内(国民*2 )の厳しい目にさらされ,「冗談も考えはらんと言えんがなー」*3となるはずです。非公式な場でのたちの悪い冗談などは,どちらかと言うと根が純朴で場を和ませようとするイイ人*4に多いような気がします。しかし,一介の学生の飲み屋でのジョークではないので,私生活面でも公人が言えばジョークで済まされません。一種の王侯の義務のようなもので,現代のマトモな諸外国の王室や大統領夫妻の言動が慎重なのはそのためでしょう。
 日本には「偉人の格言集」よりも「半偉人の失言集−先人の教訓−」*5の方が必要かも知れません。日本人のメンタリティは,公的場ではテンション民族(緊張民族)で私的場(議員の選挙区遊説場面やマスコミ懇談も準ずる)では公的反動でガードが下がり過ぎるからです。私が進もうとする道を所管する歴代法務大臣も失言歴があるみたいですし(汗。

法務大臣舌禍辞任
http://d.hatena.ne.jp/hascup_jr/20101122/p4

に加味すれば,次のようなものもあります。

「刑事責任の追及段階では、捜査当局が主役であり、国会は脇役ではないのか」(1976年7月IY法相)参議院ロッキード問題特別委員会
「(歌舞伎町周辺は)悪貨が良貨を駆逐するというか、アメリカにクロが入ってシロが追い出されるというように、混住地になっている」(1990年9月KS法相)閣議後の記者会見
南京大虐殺というのは、でっち上げだ」(1994年5月NS法相)毎日新聞掲載
法務省でも、『らい』の問題について啓発が必要なので予算をお願いしました」(2005年1月NC法相)自民党島根県議「新春の集い」
男児誕生を期待しています」(2006年9月SM法相) 
「私の友人の友人が、アル・カーイダなんです。『バリ島の中心部は爆破するから近づかないように』というアドバイスは受けてました」(2007年10月HK法相)日本外国特派員協会での記者会見*6
「判決確定から半年以内に執行するという法の規定が事実上、守られていない。法相が絡まなくても、半年以内に執行することが自動的、客観的に進む方法はないだろうか。順番通りにするか、乱数表なのか分からないが、自動的に進んでいけば『次は誰』という話にならない」(2007年10月HK法相)総辞職後の記者会見
志布志事件は、冤罪と呼ぶべきでない」(2008年2月HK法相)検察長官会同
総括出典:http://miso.txt-nifty.com/tsumami/2010/11/post-0a79.html

 次の発言は真意が誤解されて「祭り(未遂?)」になったようです。

江田法相:「死刑は欠陥抱えた刑罰」 命令に慎重姿勢示す - 毎日jp(毎日新聞)2011年1月14日 23時26分(最終更新 1月15日 10時10分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110115k0000m040110000c.html
江田五月法相は14日夜に首相官邸などで開いた就任会見で、死刑制度について「死刑という刑罰はいろんな欠陥を抱えた刑罰だと思う」と述べた。その上で「法定刑に死刑があり、裁判で選択して確定することもある。死刑だけ法相が執行命令するのはどういう意味があるのか、しっかり考えていきたい」と慎重姿勢を示した。
>江田法相は死刑執行について「普通の刑罰なら機械的に執行するが、死刑だけは法相が命令する。国民世論、世界の流れも考え、政治家として判断すべきもの」とした上で、「国民の皆さんが許されざる犯罪にけしからんとなるのはよく分かるが、人には寿命がある。それいけやれいけと執行するのとはやや違うと思う」と述べた。【石川淳一
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110115-00000000-jij-pol
江田五月法相は14日夜の記者会見で、死刑執行について「死刑というのはいろんな欠陥を抱えた刑罰だ。国民世論や世界の大きな流れも考え、政治家として判断すべきものだ」と述べ、世論の動向などを踏まえて慎重に判断する考えを示した。
>江田氏は「もともと人間はいつかは命を失う存在だ。そう(執行を)急ぐことはないじゃないかという気はする」とも指摘。ただ、制度の存廃に関しては「勉強したい」と述べるにとどめた。 
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/110115/trl1101150037000-n1.html
江田五月法相は14日夜、法務省での会見で、「死刑は欠陥を抱えた刑罰だと思っている」との考えを吐露した。その上で、「死刑のことは長く考えてきた。許されない犯罪があるというのはよく分かる。しかし、人は寿命があるので、そう急ぐこともない。それ行け、やれ行けと執行する話とは違う」と、執行に慎重な姿勢をのぞかせた。

 この記者会見での発言が「人はどうせいつか死ぬんだから死刑執行を急ぐ必要はない」という趣旨にまとめられてバッシングされたようです*7。自説に都合よく要約されて使われるリライト発言の怖さが伝わってきます。死刑の是非はおいておいても,死刑執行はヒトの生命を奪う究極の極刑ですから,その執行は慎重になすべきだからと他の刑罰と異なり,法務大臣の執行命令が法の明文で定められているのです*8。死刑を存置する米国州でも死刑執行は州知事の命令を要件とする州がほとんどです。

刑事訴訟法(昭和二十三年七月十日法律第百三十一号)

第四百七十五条  死刑の執行は、法務大臣の命令による。
 2  前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。
第四百七十六条  法務大臣が死刑の執行を命じたときは、五日以内にその執行をしなければならない。
第四百七十七条  死刑は、検察官、検察事務官及び刑事施設の長又はその代理者の立会いの上、これを執行しなければならない。
 2  検察官又は刑事施設の長の許可を受けた者でなければ、刑場に入ることはできない。
第四百七十八条  死刑の執行に立ち会つた検察事務官は、執行始末書を作り、検察官及び刑事施設の長又はその代理者とともに、これに署名押印しなければならない。
第四百七十九条  死刑の言渡を受けた者が心神喪失の状態に在るときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。
 2  死刑の言渡を受けた女子が懐胎しているときは、法務大臣の命令によつて執行を停止する。
 3  前二項の規定により死刑の執行を停止した場合には、心神喪失の状態が回復した後又は出産の後に法務大臣の命令がなければ、執行することはできない。
 4  第四百七十五条第二項の規定は、前項の命令についてこれを準用する。この場合において、判決確定の日とあるのは、心神喪失の状態が回復した日又は出産の日と読み替えるものとする。

*1:ポジションという立場で実際に指導できない人を含む

*2:未成年や2ちゃんねらーを含むw

*3:パパリンは公務員としては型破り横紙破りな奇人変人だったが,私生活面でも人から後ろ指を指されるようなことには気を付けていたし,一般市民やマスコミが探知できる場では発言が慎重でジョークもギャグもキレが悪かったらすいw

*4:しかし多くは,場や風を読むのを失念した「KYなイイ人」に多いかと思われます

*5:失言の結果を1行メモ書きでそえたものがイイでしょう(゚Д゚)マヂデス

*6:http://www.asaho.com/jpn/bkno/2007/1001.html

*7:http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E6%AD%BB%E5%88%91%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%99%E3%82%A2%E7%99%BA%E8%A8%80&lr=lang_ja&rlz=1I7RNRN_ja#sclient=psy-ab&hl=ja&lr=lang_ja&rlz=1I7RNRN_ja&tbs=lr:lang_1ja&source=hp&q=%E6%AD%BB%E5%88%91+%E6%B1%9F%E7%94%B0%E4%BA%94%E6%9C%88+%E6%80%A5%E3%81%90&pbx=1&oq=%E6%AD%BB%E5%88%91+%E6%B1%9F%E7%94%B0%E4%BA%94%E6%9C%88+%E6%80%A5%E3%81%90&aq=f&aqi=&aql=&gs_sm=e&gs_upl=6243l16676l0l17217l15l14l1l0l0l4l294l2724l0.6.7l13l0&bav=on.2,or.r_gc.r_pw.&fp=23010a2c6a718da9&biw=979&bih=476

*8:各種刑訴法コンメンタールの475条以下を参照してください