(11/20追記)略式命令の隘路

誤って「罰金30円」の略式命令…やり直し裁判に
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111117-OYT1T00297.htm?from=main3
>男性のもとには同12日付で略式命令書の写しが送達され、その後、区検から30万円の罰金納付告知書が届いた。男性が同17日、区検に金額の違いを指摘したところ、区検担当者が告知書を回収。区検から連絡を受けた地裁小倉支部の職員も男性に面会して謝罪した。
>小倉区検は、同18日に小倉簡裁に正式裁判を請求。今後は公開の法廷で裁判が開かれ、改めて判決が言い渡される。略式命令は被告への通達から2週間で確定する。誤った確定判決を修正するには検事総長最高裁に申し立てる非常上告手続きがあるが、今回は男性が確定前に気付いたため、正式裁判で修正することになった。(2011年11月17日11時15分 読売新聞)

 変な結論ですが,略式命令を受けた方が,あと2週間遅く申し出ていれば,略式命令確定後なので,非常上告*1という非公開書面審理で違法判決の罰金額の訂正を要することになりますが,被告人は最高裁に出頭するとか何も全くしなくてよく,しかも被告人に不利益な変更は被告人に効力を及ぼさないので(刑事訴訟法459条),「罰金30円」の最終訂正後の判決が事実上確定し,被告人は30円の罰金を納付すればよかったことになります。迅速に間違いを指摘して申し出た正直者が損をする,というのは法律の隘路でしょう。簡裁判事の猛省を求めたいと思います。

刑事訴訟法(昭和二十三年七月十日法律第百三十一号)最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号
  第五編 非常上告
第四百五十四条 検事総長は、判決が確定した後その事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる。
第四百五十五条 非常上告をするには、その理由を記載した申立書を最高裁判所に差し出さなければならない。
第四百五十六条 公判期日には、検察官は、申立書に基いて陳述をしなければならない。
第四百五十七条 非常上告が理由のないときは、判決でこれを棄却しなければならない。
第四百五十八条 非常上告が理由のあるときは、左の区別に従い、判決をしなければならない。
  一 原判決が法令に違反したときは、その違反した部分を破棄する。但し、原判決が被告人のため不利益であるときは、これを破棄して、被告事件について更に判決をする。
  二 訴訟手続が法令に違反したときは、その違反した手続を破棄する。
第四百五十九条 非常上告の判決は、前条第一号但書の規定によりされたものを除いては、その効力を被告人に及ぼさない。
第四百六十条 裁判所は、申立書に包含された事項に限り、調査をしなければならない。
 2 裁判所は、裁判所の管轄、公訴の受理及び訴訟手続に関しては、事実の取調をすることができる。この場合には、第三百九十三条第三項の規定を準用する。