略式命令異聞

 亡父の法廷傍聴記にありました。Jは裁判官・Aは被告人の各略号です。

J「君の調書には罰金なるくらいなら懲役の方がいいとあるけどホント?」
A「裁判官様,ホントすよ。金がないもん。それにどうせ6か月の懲役。」
J「確かに法定刑は6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金だけど。」
A「6か月働いても50万どころか30万円も貯まらないですよ。」
J「だけど刑務所に入るかもしれないんだから。」
A「検事先生にも同じこと言われたけど,カネ払えんわ。」
J「それだけかい?」
A「懲役でも,どうせ執行猶予だから刑務所行かなくて済むでしょ。」
J「ホントに罰金に落とさなくて懲役最高6月以下でいいのかい?」
A「罰金は勘弁してください。30万円で書面審査という検事の話を蹴ったんだし。」*1
J「そんな不埒な考えなら懲役刑の実刑にするかもしれないよ。」
A「かまへん。刑務所なら喰う寝るにカネいらんし。」

 こういう略式命令を拒んで執行猶予付き懲役刑を「選択する」被告人も中にはいるんですねぇ。

*1:パパリンが法廷傍聴した当時は略式手続で罰金が許されるのは最高30万円までだったそうです。その後,刑事訴訟法が2度にわたり改正されて,略式手続(略式命令)は,30万円->50万円->100万円までと認めらるようになりました。刑事訴訟法第四百六十一条「簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。」