過誤と非行は違う

リピーター医師に戒告処分、被害者「軽すぎる」
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120305-OYT1T01131.htm
厚生労働省が5日、医療ミスを繰り返す、いわゆる「リピーター医師」として初めて、三重県の塩井澄夫医師(71)の戒告処分を発表したが、被害者側からは「軽すぎる」と批判の声が上がった。
>医師の行政処分を巡って、厚労省は02年12月、刑事罰には問われない医療ミスでも明らかな過失があれば処分する方針を示した。今回の処分はこの方針に沿ったもので、同省は「医療ミスを繰り返したことを重く見て処分を決めた。今後も厳正に対応していく」とする。

 過誤(過失)と非行(故意)は責任の重さが断然違い,それは刑事事件でも行政懲戒でも変わりありません。応報感情から被害者がセンシティブになるのはわかりますが,過誤(過失)で死刑に相当する免許取消を求めるのは,過失致死傷罪で死刑を求刑するようなもので悪しきゴルゴリズムと等価です。

(過失傷害)
第二百九条  過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
 2  前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(過失致死)
第二百十条  過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
(業務上過失致死傷等)
第二百十一条  業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。
 2  自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

 過失致死傷は原則が罰金刑が上限で,業務上や自動車運転でも,最高刑は懲役・禁固5〜7年に過ぎません。死刑どころか無期も二桁懲役もありません。被害者やご遺族の心痛からくる応報感情は分かりますが,過誤過失の責任はそんなに重くはないのです。