責任規範

 責任が主観的属人的判断だとしても,その判断基準は法的判断だから,規範的に行うべきであって(規範的責任論),法は許された危険としての決定規範として作用するから,最大限度でも業界平均人や一般通常人を要求するにとどまる。法は道徳律や宗教規範ではないから聖人君子を求めるものではなく,最低限の道徳つまり普通人平均人の標準的な規範的態度を求めているに過ぎない(L・シュミット)。
 したがって,自動車運転手は,A級ライセンスドライバーのような100分の1秒単位の判断の連続でタンブレロコーナーを壁面距離50センチで時速250キロで通過する注意義務はなく,医師や先進IT工場のオペレータは,業界最高度の注意義務を求められる筋合いはなく,業界人100人中80人が普通に採用する標準的なオペレーションを行う注意義務を払えば足りる。*1 *2

*1:一般過失につき大判S4.9.3裁判例(三)刑27,最判S27.6.24判例体系30-1120,業務上過失につき最判S26.6.7刑集5-7-1236

*2:統計上,ザックリΣで切れば,上位10%はスーパードクターで平均人はマネできない神業だし,下位10%はチョンボ常習犯のITダメオペレータで反面教師の典型例だから,平均上下40%の80%を標準偏差の分母でとればよい。