日本特有(2/26追記)

 日本の交通事故民事賠償責任は,不法行為責任(民法709条)の特則として,自動車損害賠償保障法で定めれられており,加害者の責任の加重と被害者の負担軽減それに公平の見地から制度を担保する強制保険が定められています。

自動車損害賠償保障法
(昭和三十年七月二十九日法律第九十七号)
最終改正:平成二〇年六月一三日法律第六五号
(この法律の目的)
第一条  この法律は、自動車の運行によつて人の生命又は身体が害された場合における損害賠償を保障する制度を確立することにより、被害者の保護を図り、あわせて自動車運送の健全な発達に資することを目的とする。
(自動車損害賠償責任)
第三条  自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。
民法 の適用)
第四条  自己のために自動車を運行の用に供する者の損害賠償の責任については、前条の規定によるほか、民法 (明治二十九年法律第八十九号)の規定による。
http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8e%a9%93%ae%8e%d4%91%b9%8a%51%94%85%8f%9e%95%db%8f%e1%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S30HO097&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

 すなわち,運転者(運行供用者)には,交通事故を発生させただけで,3条件付き無過失責任を負うので,被害者は(1)交通事故の発生と(2)損害の発生を立証するだけで損害賠償を受けることになりますし,運転手に資力がなくても自動車損害賠償責任保険(強制保険)で最低限の保証が受けられるように配慮されています。
 ただ,被害者に飛び出し等の過失があったりすると,民法の過失相殺(自賠法4条,民法722条)が適用となりますし,被害者幼児の飛び出しを防ぐ監督を怠った母親等の「被害者側の過失」があると,同様に過失相殺が適用されることがあります(通説・判例)。

民法
(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条  第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
(損害賠償の方法)
第四百十七条  損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

 ここで注意しなくてはいけないのは,過失相殺の割合は,過失内容の純客観的判断ではなく,裁判所の裁量的判断だということです。民法722条2項が「これを考慮して……定めることができる」と裁判所の裁量権の行使を規定した趣旨から解されています(通説・判例)。
 つまり,自然科学的過失割合の判断ではなく,公平の見地からの損害賠償の帰責事由と保護事由のバランス的判断になると思われます。予見可能性や回避可能性という過失の客観面で自動的に算出するものではないのです。
 これは,日弁連の交通事故損害賠償算定マニュアル関係の書籍が参考になるらしいです。メイビー*1

  • 東京三弁護士会交通事故処理委員会日弁連交通事故相談センター東京支部共著「損害賠償額算定基準(赤本)」
  • 日弁連交通事故センター著「交通事故損害額算定基準(青本)」
  • 損害賠償算定基準研究会編「注解 交通損害賠償算定基準(上・下)」
  • 東京弁護士会法友会期会交通事故実務研究会編「交通事故実務マニュアル」

 くれぐれも,過失相殺は民事責任の問題で,刑事責任とは無関係ですから,民刑分離の思考過程をよろしくお願いします。o(_ _*)o*2

*1:すみません。m(_ _)m 実務では大事でも学部生の勉強には不要に近いので,全部通読してはいませんから(。_・☆\ ベキバキ,皆さんで読まれて理解されてください。(^^ゞポリポリ

*2:この「自動車損害賠償保障システム」は,「医療過誤問題の解決」において,「医療従事者防護」と「正当な患者(非DQN)救済」を両立するものとして公平の見地から保険を介在させるモデルシステムにならないか?という亡父の遺志があったので,少し長めに付記させていただきました。o(_ _*)o